思いがけず売れた本
アメリカ留学から帰国してしばらくの間は、留学中に開発した天職創造セミナーというワークショップ形式の参加体験型プログラムを実施し、それに参加してくれた人たちの中で希望者に対してコーチングを提供するという個人ビジネスを細々とやっていました。そのうち、参加者の人たちから「天職創造もいいけど、コーチングもおもしろそうだから、ぜひ教えてもらえないか」という要望をいただくようになりました。
そこで、勉強会形式でコーチングを教えるようになったのですが、そうこうするうちにどこで噂を聞きつけたのか、人材教育系の雑誌でコーチングに関する記事を書いてほしいと頼まれたり、研修会社からコーチングに関する講演や研修をしてほしいと頼まれたりするようになりました。
そんな中、CTIの創設者たちが自ら標榜する「コーアクティブ・コーチング」についての本を出版することになり、私もその日本語版をぜひ日本で出版したいと思い、つてを辿っていくつか出版社を回りました。そして、ある出版社を訪ねた時、「うちはあまり翻訳ものはやってないんだけど、テーマがおもしろそうだから、もしあなたが書くんだったら企画を上げてみてもいいですよ」という、思ってもみない話が突如として降ってきたのです。
結局、企画は通り、ビジネスという文脈でコーチングについての本を書くことになり、1999年の夏に『部下を伸ばすコーチング』が出版されました。初めて書いた本でしたが、タイミングがよかったのか、最終的には10万部以上とビジネス本にしてはよく売れ、様々なところから続々と講演や研修の依頼が入るようになりました。「うれしい悲鳴」とはまさにこのことで、これはとても1人では対応できないと感じ、CTIの創設者たちに相談した結果、その翌年にCTIのコーアクティブ・コーチング・プログラムを日本で提供することになりました。以前から、いつかはCTIのプログラムを日本でやりたいと薄々思ってはいましたが、本が出版され、予想外に大きな反響があったことがきっかけとなって、その想いが実現することになったのです。